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日々

『砂の女』 @ ラピュタ阿佐ヶ谷

友人たちと、阿佐ヶ谷の、素晴らしく趣のある映画館で、『砂の女』を観た。

『砂の女』 @ ラピュタ阿佐ヶ谷_f0206488_121829100.jpg



映画の内容ももちろん、あの映画館の雰囲気もその世界観に
どっぷり浸ることを手助けしてくれた。
いい映画館だったなあ。
また行きたいなあ。




それにしても。
ショック。
観終わったときに、自宅に向かって自分が歩いて帰っているこの世界が
現実なのか夢なのかよくわからなくなっていたということが、そもそももの
すごくその映画にどっぷりつかってしまったのだということを表している。

ああああ~~~~~。
もう、見てからしばらくたっているのに、ふとぼうっとして、なんとなく思い
出してしまうのですよ。
あの砂の世界を…。
なんか、口の中が、じゃりじゃりする~~。

はぁっ。
また、殿堂入りしてしまったよ、この映画。
私のfavorite movieランキングに。


『砂の女』 安部公房

***********************
砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ
込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を
穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し
二人の生活を眺める村の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる
展開のうちに、人間存在の極限の姿を追求した長編。20数ヶ国語に翻訳
されている。読売文学賞受賞作。
***********************

高校生の時に、本を読んだ。
その時にもきっと、怖い話だなあという表面的な設定に引きずられた感想を
まず抱きつつも何かしらグッとくるものを感じていたのだと思うけれども、今回
はまたそのテーマそのものにも深く感じ入るところもあったし、なにより見事な
までもの映像化に恐れ入った。

よくぞまあ、こんなあり得ない話を、あり得るかもしれないと思わせるような
リアルで現実味のある映画に仕上げたものだと。


いやしかし。
良かったなあ、岸田今日子。
妖艶だったなあ。
強かったし。
淡々と日々過ごしていく、ある種あきらめというか受け入れている感がある
にもかかわらず、ことに投げやりになるわけでもなし。
なんか、ほっとけないかわいさもあるし。

何度となく、あの砂の谷に男性が登場すると、期待しては裏切られ、もう期待
すまいと思ってもまた新たに、目の前に男性が登場すれば情もわくし。”女”
になるし。
そこが限りなく人間ぽくて、感情移入してしまう。

あそこで、男が必死に逃げだそうにも逃げ出せず、、、という展開になるため
に必須なのが、岸田今日子のあのキャラであろう。
こんな言い方もなんだが、もっと、美人だったり超癒し系の女性が頼りなさげ
にあの砂の家にいたとしたら(たとえば宮沢りえとか、宮崎あおいとか)、男性
はほうっておけない、というのもあるし、そこでそのかわいい奥様と仲むつまじく
生きていくことをもっと容易に受け入れてしまいかねない。
しかし、岸田今日子のおどろおどろしさと、やけに淡々と冷めているような様子
が、もうとにかくここから逃げ出したいと思わせ、様々な行動に出させるわけで。
でも、ふとした時に垣間見てしまった「女」な一面と、あとは忘れてはいけない
”砂”の視覚的触覚的効果が、またその妖艶さを引き立てる様で。
完全にはまっていくんだろうなあ。

『都会の女の人って、きれいなんでしょ』

ワオっ!!!
岸田今日子!
着飾ったりしてきれいかもしれないが、お前ほど女くさくないぞ!惹きつけないぞ!!
ハイ、男子一人落ちました~~!


だって、もしも
『砂の男』
だったら。
勝手に一人で生きろ!
ですからね。


粛々と同じ日々を繰り返し、ただただ、生きるために砂をかく。
無限のループの中で日々ちょっとしたエピソードもあるが基本的に閉じられた空間。
生きることって、どういうことか。
目的があって生きる?
生きることが目的?
砂の女は、ひたすら生きていくために必然的にしなくてはいけないこと、つまり砂を
かき続ける。

上に登ろうとも、砂は崩れ、手足をかけるとっかかりを作ってもすぐに流れ込む砂で
また平らになってしまう。
下に掘り進めようとしても、掘った穴に砂が次々流れ込み、また平らになってしまう。

このループから、抜け出す意味を確信していた男。
その一筋のもとの世界に戻る希望を、生きる源としていた男。
しかし、あのどこまで行っても砂の中で、水を得る大発見をしてしまったことが、そこ
から抜け出したいという強い願望を凌駕してしまった。
生きるって、何だろう。
生きる目的って、何だろう。
目的はそもそも必要あるのか。
自分が、そこから抜け出す必要がないかもしれないと、おそらく男が最もよく、理解
してしまったのだろう。

あのシチュエーションもしかり、だけれども、男がそこにいることをそういやだと思わ
なくなった瞬間が、私はなんだかもっとも怖かった。



・・・ああ、引きずられている。
映画の世界に引きずられている。
しかし、心地よくないわけではない。



by desreelove | 2009-08-04 12:27

2012年4月よりカナダトロントに住んでいます。
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