日々

必然

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9月の末に、とある勉強会に出席した。
『医療システムデザイン』に関する勉強会で、医療従事者・患者・
官僚・政治家志望者・メディア・ビジネスマン・学生…と様々な
立場の人が集まる。

今回の講師は吉野ゆりえさん。
この方は、難疾患であるサルコーマ(肉腫)というがんの患者さん
であり、日本に「サルコーマセンターを設立する会」の代表をされ
ている。
患者数の少ない難病に対してこそ、国の支援で集中的・専門的な
治療が可能なセンター病院が設立する必要があるとのお考えで
日夜活動をなさっている。

今回は、日本の医療システムに、患者側の視点から問題提起を
いただく、という形での勉強会だった。





吉野さんは1時間半の講演の中で、病気と出会ってからの軌跡を
通して、これまでにたくさんの落胆や、あきらめ、実際に体や心の
痛みを感じながらこの難病の治療開発のためにも、数は少なくとも
この病気で苦しんでいる人々のよりどころを作るべく少しずつ少し
ずつ前進してきたということをご紹介くださった。

吉野さんは「サルコーマセンターを設立する会」の代表をされているが
今年の夏に、がんセンターに「サルコーマセンター」が発足されること
となった。その新しい試みは、もう週に一度、多種多様な科の医師を
はじめとしてスタッフが集まり、希少癌の症例を検討しあい治療方針
について話し合われるカンファレンスが開かれているという。

こういった患者さんを主体とする原動力が、風通しの悪い、お金の全然
足りない、自分のことで精いっぱいになっている医療従事者の多い医療
界で、実際に稼働する医療チームの発足につながったということが、
普段自分が医療界にいるからこそ、あまりにも驚きだった。

新聞の記事や雑誌、講演での吉野さんは、とても美しく躍動感があって
今この瞬間をしっかりと生きている、というのが伝わってくる。
強くて、エネルギッシュで、前向きで、ヒマワリのようだと。
もちろんその通りだし、人生の先輩としても女性の先輩としても感銘を
受けるところばかりである。
でも、初めてご本人にお会いして、私が受けた一番の印象は。
強い、ではなく、愛深い、であった。


私にとって今回の公演の中でももっとも印象的だったのは、
『必然。』
吉野さんがこう言った時だった。

自分がサルコーマになったのは必然であり、1年に1度の大事なブラインド
ダンスの大会前に再発したのも必然。
まだ確立した治療のないこの病気そのものと、そしてこれまでのたくさんの
人との全ての出会いも、自分自身の揺れ動く感情も、全て流動的だけれども
 必然だ、と。

そういう風に考えられる吉野さんは、強いと思われるのかもしれない。
でも私には、吉野さんはご自分の命を大事にしながらご自分の心が喜ぶことを
真摯に考えて生きていらっしゃる方に見えた。
吉野さんは、「自分とはどういう人間なのか、自分は周りからどういう風に見ら
れているのか」が本当によく見えていらっしゃる上で、ご自分の心が一番喜ぶ
ことは何かをいつも考え、実行に移し、自分の体が時に悲鳴を上げることが
あっても、幾度となく再発巣を取り除く手術をしていても、これ以上ないって
ぐらいそのありのままの自分を愛してあげている方に見えた。
自分を愛しているからこそ、周りに愛を与えられている方なのだという風に見えた。
それが、エネルギーや、強さ、に見えているだけで、その根源にはなにより「愛」が
あるのだと私は思った。

そして、その言葉を耳にしたときに、また申し訳ないことに「医療システムデザイン」
とは全く違うところに思いをはせてしまった。
『全てが必然』
その言葉がすとんと落ちてきた。
そうだったんだ。

私の大事な親友が、若くして癌となり死にゆくときに言っていた。
「なんで俺が、こんな病気に、」
ではないと。
「俺だからこの病気になったんだなあ、」
と。
吉野さんの話を聞いて、彼の言っていたことがよみがえった。
その時ほど鮮明に、生の彼の温度や匂いの記憶は、残っていないけれども、
今まさに鮮明に、あの時彼が言わんとしていたことの本当の意味がじんわりと私の
心にしみ込んできて。
私はまた一つ、親友に近づいた気がしてうれしかった。
そんなパワーを、私は吉野さんにいただいた。


とにかく、その勉強会には、患者さん、医師、メディア、官僚、民間企業等、様々な
立場の方が1つの問題について各々の立場から議論を行うような場であったから、
普段あまり自分が出会ったことのない人々との出会いは刺激的で、勉強になった。
その会の理事である友人に、お声をかけていただけたことを感謝してやまない日々。

日本の中でのサルコーマのような希少疾患にどのように対応していかなくては
いけないのか。
まだまだ日本の医療と医療制度、法律、政治には問題が山積みなのだということも
改めてよくわかった。

私は、周りのみなさんに比べてぼうっとして見えたと思うけど、私も私なりに感ずる
部分があったし、それでいいのだと思う。

吉野さんが、想像もつかないような大変な努力をされてきたからこそ、ではあるが
「何とかするぞ」という信念が、強い気持ちが形になりつつある瞬間を目の当たりに
させていただいて、私にとってもまた新たに気を引き締めて自分のやるべきことを
深く掘り下げるきっかけにもなった。

結局、私自身の医師になりたいという気持ちの原点には、困っている人やつらい
苦しい思いをしている人を少しでも楽に、いい方向に向かうようなお手伝いをしたい
というところにあったのだということを改めて思い出した。
私は、そういう気持ちを強く持って働いていたつもりが、いつしか見えない敵と戦う
ように大事なことから少し目が離れてしまっていたのかもしれない。

少しするとまた、私も私なりに必死な日常生活に戻ってしまうのだろうけど、なんだか
特別な時間を過ごせたことに感謝。
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by desreelove | 2009-10-02 19:12

2012年4月よりカナダトロントに住んでいます。
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